ペインとは

「ペイン(Pain)」とは顧客や組織などにおける解決したい悩みや苦痛を指します。日常のイラっとする経験とも言い換えられます。

例えば、以下のような場面が挙げられます。

  • 社内手続きが煩雑で時間がかかる
  • よく使うExcelの便利機能がすぐに思い出せず、毎回手作業で何とかしている
  • システムからの出力資料を毎回手作業で修正して使用している

ペインを特定できれば商品やサービス開発のヒントになるため、ビジネスを提供する側にとっては重要な概念です。しかしながら、言うまでもなくペインが発生すると、毎回ストレスになるため、歓迎すべきことではありません。

ここで、ペインをメモするという小さな習慣が、この体験の意味を大きく変えてくれます。

ペインメモをおすすめする理由

コストが圧倒的に低い

ペインに遭遇した際、根本解決するには以下のように問題解決のための行動に移る必要があります。

  • 手順がわかりにくい → 手順を確立してマニュアルを作成する
  • Excelの便利機能が思い出せない → 調べて今回からその機能を使う
  • システムが直感と違う挙動をするため、毎回修正の操作を強いられる → システム改修の提案をする

このように、急いでいるときにすぐにはできないものも多くあります。こんな時でも、1行のメモを取るだけなら1分もかからず完了できます。

解決策の精度と再現性が上がる

イラッとした際に、その場で力技で何とかしたり、不便をそのままに受け入れてしまうことがありがちです。

上述のようにメモを取るだけならすぐにできますが、課題として言語化しておくと、その精度次第では「どうすれば解決できるか」を落ち着いているとき解決策まで考えられるようになります。

または、「〇〇すればすぐに解決するが、それには△△が必要で、××さんに対応してもらう必要がある」というように、具体策まで詳細に言語化、メモできれば、次回からはペインが発生するまでに予防策を講じることができます。

課題発見の解像度が上がる(習慣化の効果)

不便をそのまま我慢することが当然になっていると、イライラしているが誰も解決策を考えようとしないような状況になりがちです。

一方でペインメモを取ることが習慣化されると、似たような不便に気づきやすくなります。メモを取るにつれて

  • 「何が、どうなっていると都合が良いのか」
  • 「何が、どうなっていると問題が起こりやすいのか」

このような感覚が磨かれていき、ペインの捉え方が精密になります。結果として問題解決につなげやすくなる土壌が形成されます。

ストレスが減る

ペインはイラっとする場面と言い換えることができ、出くわすだけだとストレスが溜まります。

しかしメモをとるようになると「解決に近づく手がかり」となって出来事の意味づけが変わり、将来の問題解決の種を見つけられたととらえ直すことができます。

これにより出来事の捉え方が変わり、ストレスが軽く感じられることがあります。

ペインメモは未来の自分のための資産になる

人は同じところで何度も詰まります。特に昨今のように大量のやるべきことに追われるような時代では、不便な状況は放置されがちです。

「落ち着いたときに何とかしよう」と思っていても、喉元過ぎれば熱さを忘れるとはよく言ったもので、落ち着いたときには何に困っていたのかすら忘れているものです。

ペインメモを取っておくことで、「次に困る自分」へのマニュアルの原型が出来上がります。これがあるだけで、時間があるときに先回りして対策できます

また、1つ1つは小さなメモでも、解決策をつけてまとまるとチェックリストや手順書に昇格することができます。特定の分野で大量に集めればブログや書籍にもできるかもしれません。評価面談や面接でも問題解決能力のアピールにできます。

ペインメモのフォーマット例

最小型

メモは習慣化することがとにかく大切です。その意味で極限までハードルを下げるには

  • 現象(何が起きたか)
  • 理想(どうなっているのが良いか)

例えば、以下のようなイメージです。

  • 現象:システムから出力したデータがExcelと並び順が違っており、データを手作業で加工している。
  • 理想:Excelの並び順をシステムに合わせる。または、システムから出力されたデータをそのまま貼り付ければ集計されるような中間ワークシートを作成する。

この程度であれば忙しくても実践できて、余裕のあるときに、このメモを見ながら解決策を実行できます。

一歩踏み込んだフォーマット

  • 状況:いつ/どこで/何をしていた
  • ペイン:困ったこと(具体的に)
  • 影響:時間・ミス・ストレス・頻度(ざっくりでOK)
  • 対策:5分でできること/相談先/調べること

以下が一例になります。

  • 状況:月次決算中の5営業日目に
  • ペイン:不足資料の案内を事業部へしていたがうまく伝わらず、チャットや電話を何往復もするはめになった
  • 影響:電話とメール作成の時間で30分程度要した。最終的に資料が返ってきたのは翌日夕方になった。お互いに繁忙期だったため、事業部担当者との間で険悪な雰囲気になった。
  • 対策:資料一覧とそれぞれの説明・間違いやすい点を記載したExcelリストを作成しておく。お互いに余裕のある時期に一度打ち合わせしておく。

これもメモしておくだけなら、意外と時間はかからず、事業部へ打診する前に上長へ相談する際のたたき台にもできます。これを上長へ見せればより良い解決策を提案してくれるかもしれません。

小さな不便こそメモする価値がある

大問題が起こったときは、チームや組織として注目が集まり、問題を何とかしようと人員や予算などのリソースが集中的に投下されます。しかし、小さな不便は放置されやすい傾向にあります。にもかかわらず、小さな不便は頻度が高く、実は累積損失が大きいといえます。

ハインリッヒの法則をご存じでしょうか?「1件の重大な事故の背景には、29件の軽微な事故と、さらにその裏に300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかったがヒヤリとした事例)が潜んでいる」という経験則です。

大問題は急に起こるのではなく、小さなペインが放置されて、または重なって、起こるべくして起こるものとも言えます。

ペインメモはその見逃されやすい領域をすくい上げる材料になります。

今すぐ手元のスマホやノートに、今日感じた不快を1つだけ書いてみてはいかがでしょうか。

参考URL
ハインリッヒの法則