小規模企業共済とは
小規模企業共済制度は、個人事業主や小規模企業の経営者向けに提供される国の機関である中小機構が提供する退職金制度です。廃業や退職時の生活資金を確保するために設計され、節税効果をはじめとした税制優遇や貸付制度など、幅広いメリットがあります。本記事では、制度の詳細と利点について、要点を絞ってわかりやすく解説します。後半ではiDeCoと国民年金基金との違いについてもまとめています。
- 中小企業基盤整備機構が運営する退職金制度
- 対象者:個人事業主、会社役員、小規模企業の共同経営者
- 従業員数の条件:業種により異なる(例:商業・サービス業は従業員5人以下)
掛金と税制優遇
掛金は月額で最大で月70,000円まで設定可能です。掛金の支払いは月払い、半年払い、年払いなどいくつかから選択可能です。掛金は損金(経費)にはできませんが、それと同等の効果がある所得控除を受けられます。
- 月額1,000円~70,000円(500円単位で設定可能)
- 掛金は全額所得控除対象
- 節税効果の具体例:年間84万円の掛金で約35万円の節税可能(課税所得900万~1,800万のケース)
共済金の受取方法
廃業や退職時に、それまで積み立てた金額を退職金として受け取ることが可能で、この金額を共済金といいます。一括受取だけでなく分割による受取も可能で、一括受取の場合には退職所得控除、分割受取の場合は公的年金等控除が適用されるため、いずれの場合も税制的な優遇があります。
- 受取条件:廃業や退職時
- 一括受取・分割受取・併用が可能
- 受取時の税制優遇(退職所得または雑所得)
貸付制度
もしもの時に運転資金を借りられる一般貸付け、経済環境が変化して売上が減少したときに受けられる緊急経営安定貸付けなど、様々な貸付制度があります。基本的に無担保・無保証人で利用可能で、2025年1月時点では金利も1.5%と比較的低水準です。
掛金の一括納付
前述の通り掛金の支払いは月払い、半年払い、年払いなどいくつかから選択可能ですが、まとめて掛金を支払うことも可能です。その場合には前納による減額が受けられます。
加入手続きと変更方法
商工会や金融機関で手続できます。その他オンラインからの申し込みも可能です(2025年1月時点でマイナンバーカードが必要になります)。掛金額の変更や届出事項変更もこれらから手続き可能です。
相続時の取り扱い
死亡退職金の全額が相続税の課税対象になるわけではなく、すべての相続人が受け取った死亡退職金の合計額が非課税限度額を上回る場合に、上回る部分の金額が相続税の課税対象になります。非課税限度額は500万円×法定相続人の数となります。
他の制度との比較
類似の効果を受けられる制度として国民年金基金とiDeCoがありますが、概ね以下のような違いがあります。
小規模企業共済独自の特徴としては、上述の貸付制度があることや、支給要件を全て満たせば脱退一時金が受けられることが挙げられます(他の制度は基本的に60歳以降にならないと受給不可)。
なお、小規模企業共済制度では、予定利率(1.0%)に対応した固定額の基本共済金に加えて、毎年度の運用収入等に応じて、付加共済金を支給することとなっています。
一方でiDeCoは上表の通り、運用商品を選ぶことができます。全世界株式インデックスに投資をした場合の利回りは長期の平均で概ね4%~7%程度と言われ、直近ではそれを更に上回っています。株式はリスク資産であり、株価が下がる可能性もありますが、比較対象として参考にしてみても良いでしょう。
個人事業主や経営者は退職後の備えを自らする必要があるため、小規模企業共済制度の活用も一考の余地があります。
■出典
小規模企業共済
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/