はじめに

SUMIFとSUMIFSは「条件1つ/複数」で使い分けると説明されがちですが、実務では条件が増えることが多いため、原則SUMIFSで統一すると保守が楽になります。この記事では、統一する理由(数式の追跡のしやすさ)と、SUMIFの方が短く書ける例外まで整理します。

※本記事のショートカットは主にデスクトップ版Excel(Windows)を想定しています。Excel for the web では同等機能が制限される場合があります。


SUMIFとSUMIFSの違い

  • SUMIF:条件が1つの合計(合計範囲は省略可)
    =SUMIF(条件範囲, 条件, [合計範囲])
  • SUMIFS:条件が複数(AND)の合計
    =SUMIFS(合計範囲, 条件範囲1, 条件1, …)

機能的には「条件が1つか、条件が複数か」の違いと説明されることが多く、そのため、条件が1つの場合はSUMIFを、条件が複数の場合にはSUMIFSを使用しましょうと説明されることもあります。

個人的にはこの使い分けは少し微妙だと考えていて、なぜならSUMIFSも条件1つでも動くためです。また、条件は後で増えることがあります。


なぜ「基本SUMIFS」が強いのか

数式の追跡がしやすい

SUMIFSは合計範囲が先頭に来ます。

  • 「どの範囲の数値を集計しているか」が一目で分かる
  • そこから「どんな条件で絞っているか」に視点を移せる
  • 後から条件を足しても、式の骨格が変わらない

特に、合計範囲を追いかけるときにCtrl + [(参照元へ移動)で迷子になりにくいのが大きいです。このショートカットは式中の“最初の参照”へ移動しますが、SUMIFSは先頭が合計範囲なのでそこへ移動でき、どの数値を集計しているのかすぐにわかります。SUMIFだと条件範囲に飛んでしまうため、飛んだ先で合計範囲を探し直す必要があります。

また、集計先がさらにSUMIFS等の数式で、別の範囲の参照を繰り返している場合には効果がより顕著になります。最終的にはシステムから出力されたデータや、PDF等から手入力したデータなど、元データ(ローデータ)に辿り着きますが、SUMIFSであればCtrl + [を繰り返し実行し続ければ数式を次々と追い続けることができます。一方SUMIFだと、集計条件の箇所に飛んでしまうため、その都度、集計範囲へ移動する必要があり、トレースの手間が増えます

「条件が増える」ことへの対策

最初に集計条件1つでSUMIF関数を組んでいても、実務では「条件が増える」ことが多いので、最初からSUMIFSの型に寄せておくと後で崩れません。ポイントは「条件が1つでもSUMIFSで問題なく動作する」ことです。

また、SUMIFとSUMIFSだと条件と合計範囲の記述が逆なため、最初にSUMIFで書いてしまうと、あとから条件が2つ以上に増やしたい場合に2つの範囲を入れ替えて書き直す必要があります。この点、SUMIFSであれば後ろに集計条件を書き足すだけです。

具体的には、最初は「東京支店の売上合計」だけだったのに、後から「商品カテゴリ=飲料」も足したくなる、いった場面です。SUMIFSなら後ろに条件を足すだけで済みます。

そのため原則はSUMIFSで統一することをおすすめします。


SUMIFの方が優れているケース(合計範囲と条件範囲が同じなら、SUMIFは短く書ける)

「数値が入っている列そのもの」を条件でフィルタして合計したいとき、SUMIFは第3引数(合計範囲)を省略でき、式が短くなります。

シナリオ:A列にある「100以上の数字」だけを合計したい

  • SUMIFの場合(合計範囲を省略できる)
=SUMIF(A:A, ">=100")
  • SUMIFSの場合(合計範囲と条件範囲を2回書く必要がある)
=SUMIFS(A:A, A:A, ">=100")

「500円以上の売上だけ足したい」「0より大きい数値だけ合計したい」といった単純なフィルタリング集計では、SUMIFの方が「速く書ける」「見た目が短くて読みやすい」という実務メリットが出ます。


まとめ:結局どっちを使うべき?

迷ったらSUMIFSで統一しておくと、後から条件追加しても崩れにくいです。

Ctrl + [で数式を合計範囲をトレースできる点は非常に便利なのでぜひご活用ください。