会社員の場合、所得税及び復興特別所得税は、毎月の給与や賞与から源泉徴収され、年末に勤務先で年末調整が行われます。多くの会社員は、この年末調整によって所得税等の精算が完了し、確定申告が不要になります。
ただし、会社員であっても、医療費控除を受けたい場合、ふるさと納税について確定申告が必要になる場合、副業所得がある場合、2か所以上から給与を受けている場合、住宅ローン控除を初めて受ける場合などは、年末調整だけでは完結しないことがあります。
本記事では、会社員が押さえておきたい所得税の流れを、源泉徴収・年末調整・確定申告の関係から整理します。
目次
この記事の要点
- 年末調整は、勤務先が給与から源泉徴収した税額と、年間で納めるべき税額との差額を精算する手続きです。
- 1か所勤務で給与所得のみ、給与収入が2,000万円以下、かつ必要な控除書類を会社に提出している会社員は、年末調整で所得税等の精算が完了することが多いです。
- 給与収入2,000万円超、副業など給与・退職所得以外の所得金額が一定額超、2か所以上からの給与などは、確定申告が必要になることがあります。
- 医療費控除、寄附金控除、雑損控除、住宅ローン控除の初年度、年の途中退職で年末調整を受けていない場合などは、確定申告によって還付や控除を受けられる可能性があります。
- 年末調整済みでも、すべての税務手続きが完了しているとは限りません。源泉徴収票を確認し、自分に確定申告が必要か、または申告した方がよいかを確認することが大切です。
年末調整と確定申告の違いを先に整理
年末調整と確定申告の違いは、次のように整理できます。
| 項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 手続きする人 | 主に勤務先 | 本人 |
| 主な対象 | 勤務先からの給与所得 | その年の所得全体 |
| 主な目的 | 源泉徴収された税額と年間税額の精算 | 所得・控除・税額を本人が申告 |
| 時期 | 年末ごろ | 原則として翌年2月16日から3月15日まで。土日祝の場合は期限がずれることがあります |
| 反映しやすい控除 | 扶養控除、配偶者控除、保険料控除など | 医療費控除、寄附金控除、雑損控除なども申告可能 |
| 会社員にとっての位置づけ | 多くの場合はここで完了 | 必要な人、または還付・控除を受けたい人が行う |
所得税の確定申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までですが、期限日が土日祝に当たる場合は翌開庁日になることがあります。たとえば、令和7年分の所得税等の確定申告期間は、2026年2月16日から3月16日まででした。
また、確定申告義務がない人が還付を受けるために行う還付申告は、通常の確定申告期間に限られず、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
年末調整は、あくまで勤務先の給与を中心に税額を精算する手続きです。そのため、給与以外の所得や、会社では確認できない個人的な支出に関する控除は、確定申告が必要になることがあります。
会社員の所得税は「源泉徴収→年末調整→必要に応じて確定申告」で考える
源泉徴収とは
源泉徴収とは、会社が毎月の給与や賞与から所得税及び復興特別所得税をあらかじめ差し引く仕組みです。
ただし、毎月差し引かれる税額は概算であり、その年の最終的な税額と完全に一致するとは限りません。扶養親族の状況、保険料控除の金額、給与額の変動などにより、年間を通じた正しい税額とのズレが生じることがあります。
年末調整とは
年末調整とは、会社が1年間の給与額や各種控除をもとに、年間の所得税及び復興特別所得税を計算し直す手続きです。
源泉徴収された税額が年間の税額より多ければ還付され、少なければ追加で徴収されます。国税庁も、年末調整では、源泉徴収税額が年税額より多い場合は還付し、少ない場合は徴収すると説明しています。
確定申告とは
確定申告とは、個人が1年間の所得や控除、税額を自分で計算し、税務署に申告する手続きです。
会社員でも、給与以外の所得がある場合や、年末調整では反映できない控除を受けたい場合には、確定申告が必要または有利になることがあります。
年末調整で完結しやすいケース
1か所勤務で給与所得だけの一般的な会社員
勤務先が1か所で、給与以外の所得がなく、給与収入が2,000万円以下で、必要な申告書や控除証明書を会社に提出している場合は、年末調整で所得税等の精算が完了することが多いです。
この場合、会社に必要な書類を提出していれば、扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除、地震保険料控除などが反映されます。
年末調整で反映される主な控除
会社に書類を提出することで年末調整に反映される主な控除は、次のとおりです。
| 控除 | 年末調整での扱い |
|---|---|
| 基礎控除 | 会社に申告書を提出して反映 |
| 扶養控除 | 扶養控除等申告書などで反映 |
| 配偶者控除・配偶者特別控除 | 所得要件を確認して反映 |
| 障害者控除 | 扶養控除等申告書などで反映 |
| 寡婦控除・ひとり親控除 | 該当する場合に申告して反映 |
| 勤労学生控除 | 該当する場合に申告して反映 |
| 社会保険料控除 | 給与天引き分のほか、本人が支払った国民年金保険料なども一定の書類により反映 |
| 生命保険料控除 | 控除証明書を提出して反映 |
| 地震保険料控除 | 控除証明書を提出して反映 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | iDeCoなど該当する掛金がある場合に反映 |
| 住宅ローン控除の2年目以降 | 給与所得者は年末調整で対応できる場合がある |
| 特定親族特別控除 | 令和7年度税制改正により創設。該当者は申告書の提出が必要 |
令和7年度税制改正では、所得税の基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の創設などが行われました。これらは原則として令和7年分以後の所得税に適用され、令和7年12月以後の年末調整などに影響します。
年末調整のために会社へ提出する主な書類
控除を反映させるためには、勤務先に必要書類を提出する必要があります。主な書類は次のとおりです。
| 書類 | 主な目的 |
|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等申告書 | 扶養親族、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除などの確認 |
| 基礎控除申告書等 | 基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除などの確認 |
| 保険料控除申告書 | 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除など |
| 住宅ローン控除関係書類 | 住宅ローン控除の2年目以降に使用 |
令和7年分では、基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除をまとめて申告する様式が案内されています。最新の様式は、毎年、国税庁や勤務先の案内に従って確認しましょう。
年末調整では反映できず、確定申告で申告する主な控除
医療費控除
医療費控除は、年末調整では反映されません。
その年の1月1日から12月31日までに、自分や生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超える場合、確定申告をすることで所得控除を受けられる可能性があります。医療費控除額は、原則として「実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-10万円」で計算します。ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。
たとえば、総所得金額等が300万円の人が、その年に医療費を30万円支払い、保険金などで5万円補てんされた場合、医療費控除額は15万円です。
30万円-5万円-10万円=15万円
医療費控除を受けるには、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出し、医療費控除の明細書を添付します。医療費の領収書は原則として自宅で5年間保管します。
なお、セルフメディケーション税制は通常の医療費控除との選択適用です。両方を同時に適用することはできません。
寄附金控除・ふるさと納税
寄附金控除も、原則として年末調整では反映されません。
ふるさと納税については、一定の要件を満たす場合にワンストップ特例制度を利用できます。ただし、確定申告を行う場合は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となります。そのため、ワンストップ特例を申請していた寄附分も含めて、確定申告書で寄附金控除を申告する必要があります。
たとえば、医療費控除を受けるために確定申告をする場合は、ふるさと納税の寄附金控除も申告書に含めてください。
雑損控除
雑損控除は、災害・盗難・横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けた場合に検討する控除です。
一般的な会社員には頻出ではありませんが、該当する場合には、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害等に関連した支出を証明する書類を添付または提示します。損失額が大きい場合には、一定の範囲で翌年以後に繰り越せることもあります。
年末調整済みでも確定申告が必要になる主なケース
ここでは、会社員でも確定申告義務が生じやすいケースを整理します。
給与収入が2,000万円を超える場合
給与の年間収入金額が2,000万円を超える人は、年末調整の対象外となり、確定申告が必要になります。
そのため、会社員であっても、給与収入が2,000万円を超える場合は、原則として自分で確定申告を行う必要があります。
副業など給与以外の所得がある場合
副業、原稿料、講演料、アフィリエイト、業務委託収入などがある場合は注意が必要です。
1か所から給与を受けている会社員で、その給与の全部が源泉徴収の対象となっている場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。ここでいう「所得」は、原則として収入から必要経費を差し引いた金額です。
なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。20万円以下の副業所得がある場合は、お住まいの自治体の案内も確認してください。
また、医療費控除などのために確定申告をする場合は、原則として20万円以下の所得も含めて申告します。
2か所以上から給与を受け取っている場合
本業とは別にアルバイトなどの給与収入がある場合も注意が必要です。
給与を2か所以上から受けていて、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超えると、確定申告が必要になります。
ただし、給与収入の合計額や所得控除の状況によっては申告不要となる例外もあります。副業先から給与を受け取っている場合は、「給与以外の所得」ではなく「2か所給与」として整理するのがポイントです。
その他、確定申告が必要になることがあるケース
上記以外にも、同族会社の役員がその同族会社から貸付金の利子や不動産の賃貸料などを受け取っている場合、源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている場合、退職所得について正規の方法で計算した税額が源泉徴収税額より多くなる場合などは、確定申告が必要になることがあります。
一般的な会社員には頻出ではありませんが、該当する可能性がある場合は、国税庁の最新情報や専門家に確認しましょう。
確定申告をすると還付・控除を受けられる可能性があるケース
ここでは、「必ず申告義務がある」とは限らないものの、確定申告をすることで還付や控除を受けられる可能性があるケースを整理します。
医療費控除を受ける場合
医療費控除は年末調整では反映されないため、控除を受けたい場合は確定申告が必要です。
源泉徴収された税額がある会社員の場合、医療費控除を申告することで所得税が還付されることがあります。
寄附金控除を受ける場合
ふるさと納税や一定の寄附金について寄附金控除を受ける場合も、原則として確定申告で申告します。
ワンストップ特例を利用している場合でも、医療費控除などのために確定申告をする場合は、ワンストップ特例申請分を含めて寄附金控除を申告する必要があります。
住宅ローン控除を初めて受ける場合
住宅ローン控除、正式には住宅借入金等特別控除を初めて受ける年は、給与所得者であっても確定申告が必要です。
2年目以後は、給与所得者であれば年末調整で住宅ローン控除の適用を受けられる場合があります。この場合は、税務署から送付される住宅ローン控除関係書類や、金融機関等から交付される年末残高等証明書を勤務先に提出します。
住宅ローン控除は、居住開始年や住宅の種類によって要件が異なります。適用を受ける場合は、国税庁の最新ページで自分のケースに合う要件を確認しましょう。
年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
年の途中で退職し、その年中に再就職していない場合などは、年末調整を受けていないことがあります。
この場合、給与から源泉徴収された所得税及び復興特別所得税が本来の年税額より多くなっていることがあり、確定申告によって還付を受けられる可能性があります。
ただし、年の途中で退職した人でも、一定の場合には年末調整の対象になることがあります。たとえば、12月に支給される給与を受けた後に退職した人などは、中途で行う年末調整の対象に含まれます。
雑損控除を受ける場合
災害・盗難・横領などにより、生活に通常必要な資産に損害を受けた場合は、雑損控除を受けられることがあります。
雑損控除は年末調整では反映されないため、適用を受ける場合は確定申告が必要です。
迷ったときの確認ポイント
年末調整後に、次の項目を確認してみてください。
| 確認項目 | 該当する場合の考え方 |
|---|---|
| 給与収入が2,000万円を超えているか | 確定申告が必要 |
| 給与以外の所得金額が20万円を超えているか | 確定申告が必要になる可能性 |
| 2か所以上から給与を受け取っているか | 年末調整されなかった給与収入等の金額を確認 |
| 医療費控除を受けたいか | 確定申告が必要 |
| ふるさと納税で確定申告が必要な状況か | ワンストップ特例分も含めて寄附金控除を申告 |
| 住宅ローン控除の初年度か | 控除を受けるには確定申告が必要 |
| 年の途中で退職し、年末調整を受けていないか | 還付申告を検討 |
| 災害・盗難・横領などで損失があるか | 雑損控除を検討 |
| 所得税の確定申告は不要だが副業所得があるか | 住民税申告が必要か自治体に確認 |
年末調整済みでも「すべて完了」とは限らない
年末調整は、勤務先の給与を中心に所得税等を精算する手続きです。
一方で、給与以外の所得、医療費、寄附金、災害損失、住宅ローン控除の初年度など、勤務先では確認できない事情は、年末調整では反映できないことがあります。
年末調整後は源泉徴収票を確認し、自分に確定申告が必要か、または確定申告をした方が有利かを見直すことが大切です。
まとめ
会社員の所得税及び復興特別所得税は、毎月の源泉徴収と年末調整によって、多くの場合は精算されます。
ただし、年末調整は勤務先の給与を中心とした精算であり、医療費控除、寄附金控除、副業所得、2か所給与、住宅ローン控除の初年度などは、年末調整だけでは対応できないことがあります。
また、確定申告には「申告しなければならないケース」と「申告することで還付や控除を受けられるケース」があります。この2つを分けて考えると、自分に必要な手続きが判断しやすくなります。
年末調整後は源泉徴収票を確認し、自分に確定申告が必要か、または申告した方がよいかを確認しましょう。

