税制改正は毎年行われ、税率に影響を与えたり設備投資関連の税制優遇制度の内容が変更されたりと、中小企業の経営にも大きな影響を与えます。12月の税制改正大綱が年間のうちの一つの大きなイベントですが、本記事では税制改正全体の大まかな流れについて解説します。

1.各省庁等の関係者から要望提出(7月~8月)

この期間、各省庁だけでなく、業界団体や税理士会、企業や経済団体など多岐にわたる関係者が、政策課題や経済環境の変化に対応するための税制改正の要望を整理して財務省や与党税制調査会へ提出します。

提出の締め切りは例年8月末で、ここで集められた要望は後の審議プロセスの基礎資料となります。各要望は、国全体の税制の公平性や経済効率性、さらには社会保障や環境政策との整合性を踏まえて評価されます。

2. 与党税制調査会での検討(9月~11月)

集められた各省庁や団体の要望は、与党税制調査会において検討されます。ここでは、自民党・公明党を中心に、各要望の現実性、財政への影響、経済政策との整合性などが議論され、税制改正の大まかな方向性が決定されます。

各省庁からの要望が、現行制度の問題点や先行きの経済予測に基づいて、どの程度現実的かつ実効性があるかを精査し、全体としてバランスを取るための調整が行われます。

この段階で、政府全体としての税制改正の骨子が固まり、各省庁の独自提案が統一された大綱へとまとめられます。政府税制調査会の中長期的な視点と、与党税制調査会の短期的かつ実務的な調整が融合し、最終的な改正内容の基礎となります。


3. 税制改正大綱の公表(12月中旬)

9月~11月の議論を経て、与党が取りまとめた改正の方向性は「税制改正大綱」として文書化されます。この大綱は、12月中旬に閣議決定され、国民やメディアに向けて公表されます。大綱には、翌年度に実施される具体的な税率変更、控除制度の改定、さらには新たな税制措置の導入など、細かい改正項目が示されます。

大綱の内容は、その後の国会での審議前に大きな変更が加えられることは少なく、実質的な税制改正の方向性を示す指標となります。公表後は、各省庁や専門家による解説、セミナーなどを通じて、改正内容が広く共有されます。


4. 閣議決定と国会での審議・成立(1月〜3月)

税制改正大綱を基に、政府は具体的な税制改正法案の作成に着手します。1月に閣議決定された法案は、通常国会に提出され、衆議院と参議院で順次審議され、最終的に成立します。

税制改正大綱は、与党の税制調査会が中心となって作成されます。この段階で、与党内での調整が徹底的に行われており、政府や関係省庁との意見も調整済みです。与党内で合意された内容は、その後の閣議決定においても基本的に尊重されるため、大きな変更が加えられることは稀です。最終的に法案が可決されると、改正法として正式に成立し、公布されます。


5. 新税制の施行(4月以降)

法案が成立し公布されると、通常は翌年度の新たな会計年度開始日である4月1日から、新税制が施行されます。施行開始後は、税務署や各省庁、そして専門家による解説も本格化して、事業者や納税者が新制度にスムーズに対応できるようサポートされます。

中小企業に関連の大きい令和7年度税制改正の大綱では、中小企業の800万円までの所得に適用される軽減税率の特例が2年間延長されたことや、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制が延長されたことなどがあげられます。

税制改正大綱
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/20241227taikou.pdf