経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済は、中小企業倒産防止共済、俗称でトウサンボウとも呼ばれることのある制度です。この制度は、中小企業の皆さんが安心して事業を続けられるよう、取引先の突然の倒産による連鎖倒産を防ぐことを目的としています。取引先の倒産は、中小企業の経営者にとって大きな脅威です。経営セーフティ共済は、そんな不測の事態に備える「経営のセーフティネット」として機能する趣旨の制度です。節税手段としても良く使われますが、解約手当金の受取時には税金がかかる点に注意が必要です。経営セーフティ共済の加入を検討する際には、メリットとデメリットをしっかり理解しましょう。

加入のメリット

経営セーフティ共済に加入すると、以下のようなメリットがあります。

  1. 取引先の倒産時の資金調達(共済金の貸付け)
    もし取引先が倒産しても、積み立てた掛金の10倍の範囲内(最高8,000万円)で、無担保・無保証人で共済金を借りられます。
  2. 一時貸付金
    取引先事業者が倒産していなくても臨時に事業資金を必要とする場合に借入れできる制度です。金額は掛金総額の95%が上限です。また、一時貸付金の借入期間は1年間ですが、借換制度もあります。
  3. 掛金の税制メリット
    掛金は再加入時をのぞき、税法上、損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)として計上できます。つまり、納付時には節税効果が期待できます。ただし、後述しますが解約手当金は課税されるため課税の繰延である点には注意してください。

加入資格と条件

経営セーフティ共済に加入できるのは主に、次の条件を満たす中小企業者です。

  • 資本金等が3億円以下の会社および個人事業主
  • 従業員数が300人以下の製造業、建設業、運輸業、その他の業種
  • 従業員数が100人以下の卸売業
  • 従業員数が100人以下のサービス業
  • 従業員数が50人以下の小売業

掛金について

  • 月額掛金は5,000円から200,000円までの範囲で、5,000円単位で選択可
  • 掛金総額の最高限度額(積立金)は800万円
  • 掛金納付は金融機関からの口座振替
  • 前納も可能

共済金貸付の概要

取引先が倒産した際の共済金の貸付の概要は以下の通りです。貸付事由は1つ下のセクションにてご説明します。

  • 貸付限度額は、掛金総額の10倍(最高8,000万円)
  • 償還期間は、貸付金額に応じて5年~7年
  • 利息は、一般貸付の場合は年0.9%、無利子貸付の場合は無利子です(2025/1/4時点)。

上述の通り、取引先の倒産とは関係なく一時的な資金需要に応える一時貸付金制度もあります。

共済金の貸付事由

共済金を借りられるのは、取引先事業者が倒産した場合です。倒産の定義には次のようなものがあります。なお、夜逃げは共済金の貸付事由には該当しません。

  • 破産手続開始の申立て
  • 再生手続開始の申立て
  • 更生手続開始の申立て
  • 特別清算開始の申立て
  • 手形交換所による取引停止処分

契約の解約と解約手当金

40か月以上加入した後に解約すると、解約手当金が支給されます。金額は掛金総額の範囲内で、加入期間に応じて計算されます。それより前に解約した場合には元本割れとなる点は留意が必要です。また、法人の場合には益金に、個人の場合は事業所得として課税されます。

加入手続きの流れ

加入するときは、所定の加入申込書に必要事項を記入して、最寄りの商工会議所・商工会等に提出します。このほか、オンラインでの申し込みも可能です。

2024年税制改正の影響

2024年税制改正により、解約後2年間は再加入しても掛金を経費(損金)として計上できなくなりました。単純な節税目的で加入する場合には、この点には特に注意が必要です。

加入すべきかはよく検討する必要あり

取引先の倒産による影響が大きい業種では加入について一考の余地があります。ただし、共済金の貸付事由に記載のとおり、取引先の破産手続の申立といった事実が必要であるため、単に支払いが遅れているだけでは共済金の貸付は受けられません(一般貸付は借入可能です)。

節税効果についても課税の繰延(解約手当金の受取時に税金がかかる)にすぎない点や、正式な貸付事由に該当しない場合には共済金の貸付は受けられない点はデメリットともいえます。そのため、加入することが自社のためになるかは良く検討する必要があります。制度の内容を鑑みると、取引先が倒産するような業種でない場合には無理に加入する必要はないといえます。

詳細は以下のサイトをご参照ください。
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html

節税策としては小規模企業共済も良く使用されます。以下の記事にて解説していますので宜しければこちらもご覧ください。
https://km-cpa.jp/skyosai/

節税は特定の施策が税金を減らすために有効だからといって直ちに行うべきではない場合も多いです。弊事務所では、会社や経営者が大事にしていることや、長期的な戦略まで遡ってご相談に応じます。お問い合わせは以下からお願いします。
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