所得税は、個人の所得に対してかかる国税です。
会社員の方であれば、毎月の給与から所得税などが差し引かれ、年末調整で精算されることが一般的です。個人事業主やフリーランスの方であれば、1年間の売上や経費を整理し、確定申告によって所得税を計算します。
所得税の基本的な仕組みを知っておくと、自分の手取りがどのように決まっているのか、確定申告が必要なのか、どの支出が控除や経費になるのか、といった点を理解しやすくなります。
この記事では、所得税の基本について、収入・所得・課税所得の違い、所得の種類、所得税の計算方法、会社員・個人事業主・副業の場合の注意点など、全体像を整理してお伝えします。
なお、所得税の控除額や年末調整の取扱いは税制改正により変わることがあります。令和8年度税制改正でも、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件などに改正が行われています。具体的な金額を確認する場合は、申告する年分の最新情報を確認することが大切です。
目次
この記事の要点
- 所得税は、個人の所得に対してかかる国税です。
- 所得税は、収入にそのまま税率をかけるのではなく、所得・所得控除・税額控除などを踏まえて計算します。
- 所得は10種類に分かれ、所得区分によって必要経費、赤字、青色申告、申告方法などの扱いが変わります。
- 会社員、個人事業主、副業をしている人では、所得税の手続きや注意点が異なります。
- 所得税を理解するには、源泉徴収・年末調整・確定申告の関係を押さえることが重要です。
所得税とは
所得税とは、個人が1年間に得た所得に対してかかる国税です。ここでいう1年間とは、原則として1月1日から12月31日までを指します。その年の所得を集計し、翌年に申告・納税するという流れが基本です。
所得税は、会社員、個人事業主、フリーランス、副業をしている方、不動産収入がある方、年金を受け取っている方など、多くの人に関係します。
会社員の場合は、毎月の給与から所得税及び復興特別所得税が源泉徴収され、年末調整で精算されることが多いため、自分で税額を計算する機会は少ないかもしれません。一方で、個人事業主やフリーランスの場合は、自分で売上や経費を集計し、確定申告を行う必要があるケースが多くなります。
所得税は、単に「収入がある人にかかる税金」というよりも、その人の所得の大きさや家族構成、社会保険料の支払い、医療費などの事情を踏まえて計算される税金です。そのため、同じ年収であっても、扶養親族の有無や控除の内容によって、実際の税額は変わります。
また、所得税は国に納める税金です。住民税、社会保険料、個人事業税、消費税などとは別の制度ですので、それぞれを分けて理解しておく必要があります。
国税庁も、所得税は1年間のすべての所得金額から所得控除額を差し引いた課税所得金額に税率を適用して税額を計算するものと説明しています。
所得税を納める人
所得税は、所得がある個人に対してかかる税金です。ただし、所得があっても、所得控除や税額控除、非課税所得の扱いなどにより、実際の納付税額が生じない場合もあります。
日本に住んでいる個人の多くは、所得税の納税義務者になります。会社員であれば給与所得、個人事業主であれば事業所得、不動産収入がある方であれば不動産所得など、それぞれの所得に応じて所得税を計算します。
所得税では、日本に住所がある人や、現在まで引き続いて1年以上日本に居所がある人を「居住者」として扱います。一般的な日本在住者であれば、多くの場合はこの居住者に該当します。
一方で、海外に住んでいる人、日本に短期間だけ滞在している人、海外勤務中の人などは、居住者・非居住者の判定が問題になることがあります。居住者か非居住者かによって、日本で課税される所得の範囲が変わるため、該当する場合は個別に確認が必要です。
収入・所得・課税所得の違い
所得税を理解するうえで、最初に押さえておきたいのが、収入・所得・課税所得の違いです。この3つは似た言葉ですが、税金の計算上は意味が異なります。
| 区分 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 収入 | 給与、売上、報酬など、入ってきた金額そのもの | 給与収入500万円、売上500万円 |
| 所得 | 収入から必要経費や給与所得控除などを差し引いた金額 | 売上500万円-必要経費200万円=所得300万円 |
| 課税所得 | 所得から所得控除を差し引いた、税率をかける前の金額 | 所得300万円-所得控除=課税所得 |
収入とは
収入とは、給与、売上、報酬、家賃収入、年金など、入ってきた金額そのものをいいます。
例えば、個人事業主が1年間で500万円の売上を得た場合、この500万円が収入です。会社員であれば、源泉徴収票の「支払金額」に記載される金額が、税務上の給与収入にあたります。一般的に会社員でいうところの年収に近い金額です。
所得とは
所得とは、収入から必要経費や一定の控除額を差し引いた後の金額です。
個人事業主であれば、売上から仕入、外注費、家賃、通信費などの必要経費を差し引いて事業所得を計算します。会社員の場合は、実際にかかった経費を一つずつ差し引くのではなく、給与収入に応じて決まる給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。
つまり、所得は税金計算上の利益に近い考え方です。
課税所得とは
課税所得とは、所得からさらに所得控除を差し引いた後の金額です。所得控除には、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除などがあります。
所得税は、この課税所得に税率をかけて計算します。そのため、所得税は「収入にそのまま税率をかける税金」ではありません。
流れとしては、次のように整理できます。
収入 → 所得 → 課税所得 → 所得税額
例えば、個人事業主の売上が500万円、必要経費が200万円であれば、所得は300万円です。そこから社会保険料控除や基礎控除などの所得控除を差し引き、残った課税所得に税率をかけて所得税を計算します。
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収入・所得・課税所得の違い
所得の種類
所得税では、所得を内容に応じて10種類に分けます。代表的なものは、給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得などですが、正確には次の10種類です。
| 所得の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 利子所得 | 預貯金や公社債の利子などによる所得 |
| 配当所得 | 株式の配当や投資信託の分配金などによる所得 |
| 不動産所得 | 土地や建物などの貸付けによる所得 |
| 事業所得 | 個人事業主やフリーランスが事業から得る所得 |
| 給与所得 | 会社員、役員、パート、アルバイトなどの給与・賞与に係る所得 |
| 退職所得 | 退職金など、退職により一時に受け取る所得 |
| 山林所得 | 山林の伐採・譲渡などによる所得 |
| 譲渡所得 | 土地、建物、株式、一定の資産などを譲渡したことによる所得 |
| 一時所得 | 営利目的の継続的行為から生じたものではない一時的な所得 |
| 雑所得 | 他の9種類のいずれにも該当しない所得 |
主な所得区分の概要
利子所得とは、預貯金や公社債の利子などによる所得です。配当所得とは、株式の配当や投資信託の分配金などによる所得です。
不動産所得とは、土地や建物などを貸し付けることで得られる所得です。アパートやマンションの賃貸収入などが該当します。
事業所得とは、個人事業主やフリーランスが事業から得る所得です。小売業、サービス業、士業、デザイン業、Web制作業など、継続的に営む事業から生じる所得が該当します。ただし、フリーランスや副業による収入であっても、内容や実態によっては事業所得ではなく雑所得に該当する場合があります。
給与所得とは、会社員、役員、パート、アルバイトなどが勤務先から受け取る給与や賞与に係る所得です。退職所得とは、退職金など、退職により一時に受け取る所得です。
山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡したりすることで生じる所得です。譲渡所得とは、土地、建物、株式、一定の資産などを譲渡したことによる所得です。不動産や株式の売却益などが代表例です。
一時所得とは、営利目的の継続的行為から生じたものではない一時的な所得をいいます。懸賞金、競馬の払戻金、生命保険の一時金などが該当する場合があります。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得です。公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得の一部、原稿料、講演料などが雑所得に該当する場合があります。
どの所得に該当するかによって、必要経費にできる範囲、赤字が出た場合の取扱い、損益通算の可否、青色申告の可否、申告方法などが変わります。
特に、副業収入については、事業所得なのか雑所得なのかが問題になることがあります。収入金額だけでなく、継続性、独立性、営利性、記帳や帳簿書類の保存状況、事業としての実態などを踏まえて判断する必要があります。
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所得の種類
所得税の計算方法
所得税の計算は、大まかに次の流れで進みます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 収入を集計する | 給与、売上、報酬、家賃収入など、1年間の収入を整理します。 |
| 2. 所得を計算する | 収入から必要経費や給与所得控除などを差し引きます。 |
| 3. 所得控除を差し引く | 基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などを反映し、課税所得を求めます。 |
| 4. 税率をかける | 課税所得に所得税率をかけて所得税額を計算します。 |
| 5. 税額控除を差し引く | 住宅ローン控除、配当控除、外国税額控除などを反映します。 |
| 6. 源泉徴収税額などを精算する | 源泉徴収済みの税額や予定納税額などを精算します。 |
収入を集計する
まず、1年間の収入を集計します。会社員であれば給与収入、個人事業主であれば売上、フリーランスであれば報酬、不動産賃貸をしている場合は家賃収入などです。
所得を計算する
次に、収入から必要経費や給与所得控除などを差し引き、所得を計算します。所得の種類ごとに計算方法が異なるため、まずはどの所得に該当するかを確認することが重要です。
所得控除を差し引く
所得を計算した後、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などの所得控除を差し引きます。所得控除を差し引いた後の金額が、課税所得です。
所得控除の金額や対象者は、税制改正によって変わることがあります。令和8年度税制改正では、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件などに改正が行われています。具体的な控除額を確認する際は、対象となる年分の情報を確認しましょう。
税率をかける
課税所得に対して所得税率をかけます。所得税は、所得が多くなるほど高い税率が適用される累進課税です。所得税率は、分離課税に対するものなどを除き、課税所得に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。
ただし、課税所得全体に一律で高い税率がかかるわけではありません。課税所得が一定額を超えた場合でも、超えた部分に対して段階的に高い税率がかかる仕組みです。
また、平成25年以降は、所得税とあわせて復興特別所得税も関係します。さらに、令和9年1月以後は防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税の税率引下げとあわせて、所得税に付加される税の扱いが変わります。国税庁の資料では、令和9年以後、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%の合計2.1%相当額を所得税と併せて徴収することが示されています。
税額控除を差し引く
税率をかけて計算した税額から、該当する税額控除を差し引きます。代表的なものとして、住宅ローン控除、配当控除、外国税額控除などがあります。
所得控除は、税率をかける前の所得から差し引くものです。税額控除は、計算された税額から直接差し引くものです。この違いは、所得税を理解するうえで重要です。
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所得税の計算方法
所得控除と税額控除の違い
所得控除と税額控除は、どちらも税負担を軽くする効果があります。ただし、差し引くタイミングが異なります。
| 区分 | 差し引く対象 | 主な例 |
|---|---|---|
| 所得控除 | 税率をかける前の所得・課税所得 | 基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、医療費控除など |
| 税額控除 | 計算された所得税額 | 住宅ローン控除、配当控除、外国税額控除など |
所得控除とは
所得控除は、税率をかける前の所得から差し引くものです。例えば、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除、基礎控除などがあります。
所得控除が増えると、課税所得が減ります。その結果、税率をかける対象が小さくなるため、所得税も少なくなります。
所得控除については以下のブログにてより詳細に解説しています。
所得控除とは
税額控除とは
税額控除は、計算された所得税額から直接差し引くものです。代表的なものとして、住宅ローン控除、配当控除、外国税額控除などがあります。
例えば、所得控除が10万円増えた場合は、10万円に税率をかけた分だけ税金が減ります。一方で、税額控除が10万円ある場合は、原則として税額そのものが10万円減ります。このように、所得控除と税額控除は名前が似ていますが、税金への影響の仕方が違います。
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税額控除とは
源泉徴収・年末調整・確定申告の関係
所得税を理解するうえでは、源泉徴収、年末調整、確定申告の関係も押さえておく必要があります。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う側が、あらかじめ所得税などを差し引いて国に納付する仕組みです。会社員であれば、毎月の給与や賞与から所得税及び復興特別所得税が天引きされています。
また、フリーランスの報酬についても、原稿料、講演料、デザイン料など一定の報酬については源泉徴収されることがあります。ただし、すべてのフリーランス報酬が源泉徴収の対象になるわけではありません。国税庁は、居住者に支払う原稿料や講演料などを源泉徴収の対象範囲として挙げています。
源泉徴収は、給与や多くの報酬については最終的な税額を確定させるものではなく、前払いに近い性質があります。最終的な税額は、年末調整や確定申告によって精算されます。
年末調整とは
年末調整とは、会社が従業員の1年間の給与や控除をもとに、正しい所得税額を計算し、毎月の給与から源泉徴収した金額との差額を精算する手続きです。
多く払いすぎていれば還付され、足りなければ追加で徴収されます。会社員の多くは、年末調整によって給与に関する所得税の精算が完了します。
確定申告とは
確定申告とは、納税者本人が1年間の所得と税額を計算し、税務署に申告する手続きです。所得税の確定申告期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。期限日が土日祝日にあたる場合などは、取扱いが変わることがあります。
個人事業主やフリーランス、不動産所得がある方などは、確定申告が必要になることが多いです。会社員であっても、副業所得が一定額を超える場合、医療費控除を受けたい場合、初年度の住宅ローン控除を受けたい場合、ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合などは、確定申告が必要または有利になることがあります。
会社員の所得税
会社員の所得税は、主に給与所得をもとに計算されます。給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いて計算します。
会社員の場合、仕事に必要なスーツ代、書籍代、文房具代などがあったとしても、原則として個別に経費を差し引いて所得税を計算するわけではありません。その代わりに、給与収入に応じた給与所得控除が設けられています。
ただし、給与所得者にも例外があります。一定の特定支出の額が給与所得控除額の2分の1相当額を超える場合には、確定申告により特定支出控除を受けられることがあります。
会社員の場合は、毎月の給与から所得税などが源泉徴収され、年末調整で精算されるため、所得税の手続きが会社側で完結することが多いです。ただし、次のような場合には、会社員でも確定申告が必要または有利になることがあります。
- 医療費控除を受ける場合
- 初年度の住宅ローン控除を受ける場合
- ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合、または使えない場合
- 副業による所得がある場合
- 不動産所得がある場合
- 給与収入が2,000万円を超える場合
- 2か所以上から給与を受けている場合
- 年末調整で反映されていない控除がある場合
国税庁は、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人、1か所から給与を受けていて給与の全部が源泉徴収対象であり、給与所得・退職所得を除く各種所得金額の合計額が20万円を超える人などについて、確定申告が必要なケースとして説明しています。
会社員が所得税を理解するうえで、まず見ておきたいのが源泉徴収票です。源泉徴収票には、主に次のような金額が記載されています。
- 支払金額
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除の額の合計額
- 源泉徴収税額
支払金額は、税務上の給与収入にあたる金額です。給与所得控除後の金額は、給与収入から給与所得控除などを差し引いた後の金額です。所得控除の額の合計額は、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などの合計です。
源泉徴収税額は、年末調整済みの源泉徴収票であれば、給与について精算された所得税及び復興特別所得税の額を示します。ただし、年末調整が済んでいない場合や、給与以外の所得がある場合には、源泉徴収票だけで最終的な税額が完結しないことがあります。
個人事業主の所得税
個人事業主の所得税は、主に事業所得をもとに計算します。事業所得は、売上から必要経費を差し引いて計算します。
売上が多くても、必要経費が多ければ所得は小さくなります。逆に、売上がそこまで大きくなくても、経費が少なければ所得は大きくなります。
個人事業主にとって重要なのは、日々の帳簿付けと資料の保存です。売上、仕入、外注費、家賃、通信費、消耗品費、旅費交通費などを整理し、事業に関係する支出を適切に記録しておく必要があります。
国税庁も、1年間の所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記帳し、取引に伴い作成・受領した書類を保存しておく必要があると説明しています。
必要経費になるかどうか
必要経費になるかどうかは、その支出が事業に関係しているかどうかが基本です。例えば、事業で使うパソコン、業務用のソフトウェア、取引先との打合せ交通費、事務所家賃などは、事業との関係を説明しやすい支出です。
一方で、生活費、私的な飲食、趣味の支出などは、原則として経費にはなりません。自宅兼事務所の家賃や水道光熱費、通信費など、事業用とプライベート用が混ざる支出については、事業で使っている部分を合理的に区分する必要があります。
青色申告
個人事業主の場合、青色申告を選択することで、青色申告特別控除、赤字の繰越し、青色事業専従者給与などのメリットを受けられる場合があります。ただし、青色申告を行うには、事前の届出や帳簿付けなどの要件があります。
青色申告をすることができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得がある方です。副業収入が雑所得に該当する場合には、青色申告の対象にはなりません。
青色申告特別控除については、一定の要件を満たす場合に最高55万円、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告など一定の要件を満たす場合に最高65万円の控除を受けられることがあります。また、青色申告者に事業所得などの損失がある場合、一定の要件のもとで純損失を翌年以後3年間にわたって繰り越せる場合があります。
所得税以外の支払いにも注意
個人事業主の場合、所得税だけを見ていればよいわけではありません。所得税のほかに、住民税、国民健康保険料、国民年金、個人事業税、消費税などの支払いが発生することがあります。
所得税の納税が終わった後に、住民税や国民健康保険料の負担が重く感じられることもあります。そのため、個人事業主は、所得税だけでなく、年間を通じた資金繰りとして税金と社会保険料を考えておく必要があります。
副業・フリーランスの所得税
副業やフリーランスの収入がある場合、まず確認したいのは、その収入がどの所得に該当するかです。特に、事業所得になるのか、雑所得になるのかは、両者により所得税計算に大きな違いが生じるため重要です。
事業として継続的・独立的に行っている場合は、事業所得に該当する可能性があります。一方で、規模が小さいもの、一時的なもの、事業としての実態が弱いものは、雑所得に該当することがあります。この区分によって、青色申告の可否や赤字が出た場合の取扱いが変わります。
雑所得には、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得などが含まれます。業務に係る雑所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合には、現金預金取引等関係書類の保存が必要になるなど、一定の保存義務もあります。
副業所得がある会社員の注意点
会社員が副業をしている場合、年末調整だけでは副業分の所得税は精算されません。年末調整は、基本的には勤務先の給与に関する精算です。副業による所得がある場合は、自分で確定申告が必要になることがあります。
一般的に、年末調整済みの給与所得者で、1か所から給与を受けており、その給与の全部が源泉徴収の対象となっている場合、給与所得・退職所得を除く各種所得金額の合計額が20万円を超えると、原則として確定申告が必要になります。ここで注意したいのは、「収入」ではなく「所得」で判断するという点です。
例えば、副業の売上が30万円あっても、必要経費が15万円あれば、所得は15万円です。この場合、所得税の確定申告が不要となることがあります。
ただし、住民税の申告は別途必要になることがあります。また、医療費控除、住宅ローン控除、ふるさと納税の寄附金控除などのために確定申告をする場合には、副業所得も含めて申告する必要があります。さらに、2か所以上から給与を受けている場合や、給与収入が2,000万円を超える場合などは、別の基準で確定申告が必要になることがあります。
源泉徴収されていても終わりではない
フリーランスの場合、取引先から報酬を受け取る際に、源泉徴収されていることがあります。原稿料、講演料、デザイン料などでは、報酬から所得税などが差し引かれて入金されるケースがあります。
ただし、源泉徴収されているからといって、それで所得税の計算が完了するわけではありません。確定申告で、売上、必要経費、所得控除などを整理し、最終的な税額を計算します。
その結果、源泉徴収されていた金額が多ければ還付されることがあります。逆に、足りなければ追加で納付することになります。
まとめ
所得税は、身近な税金ですが、仕組みを分解するといくつかの段階に分かれています。まず、収入と所得は違います。さらに、所得から所得控除を差し引いたものが課税所得です。所得税は、この課税所得に税率をかけて計算します。
また、所得には10種類の区分があり、給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得など、どの所得に該当するかによって取扱いが変わります。特に、副業やフリーランスの収入がある場合は、事業所得なのか雑所得なのかによって、青色申告の可否や赤字の取扱いが変わるため注意が必要です。
会社員であれば、源泉徴収票を見ることで、自分の所得税がどのように計算されているかを確認できます。個人事業主やフリーランスであれば、売上と経費を日々整理し、確定申告に備えることが重要です。副業をしている方は、収入金額だけでなく、所得金額や所得区分を確認しておく必要があります。
所得税は、細かく見ていくと複雑な制度ですが、大まかな計算の順序を把握するだけでも理解しやすくなります。まずは、収入、所得、課税所得の違いを押さえること。次に、自分の収入がどの所得区分に該当するかを確認すること。この2つを理解するだけでも、所得税の全体像はかなり見えやすくなります。
なお、所得税の控除額、給与所得控除、年末調整、住宅ローン控除などは、税制改正によって変わることがあります。実際に申告や節税判断を行う場合は、対象となる年分の最新情報を確認しましょう。


