1. はじめに
会社を設立する際には、資本金をいくらにするか決める必要があります。過去には最低資本金が定められていた時代もありましたが、現在は1円でも設立することが可能です。とはいえ考え無しに資本金を定めてしまうとあとで支障が出ることもあり得ます。本記事では、資本金の決め方についての考え方をご紹介しますので、会社設立の際にご参考ください。
2. 資本金の基本的な考え方
資本金は、会社の設立時に株主や出資者が提供する資金のことを指します。基本的に用途は限定されないため、設立直後は運転資金や設備投資等、事業用であれば自由に使用可能です。
また、資本金は債権者保護のための財産としての役割もあるため、多いほど設立直後の信用が高くなるといえます。ただし、多額にすることによるデメリットもあるため、後述します。
3. 資本金額を決める際の主な考慮要素
✔ 設立直後の資金繰り予測
資本金額を決定する際は、事業の規模と種類を考慮する必要があります。これらは必要な初期投資額に大きな影響を与えます。製造業は高額な設備投資が必要となる一方、サービス業は比較的少額でも事業は始められます。
初期投資には、事務所の賃貸料、機械設備の購入、初期の人件費、マーケティング費用などが含まれます。これらの費用を正確に見積もることが、適切な資本金額を決定する上で重要となります。
さらに、事業が軌道に乗るまでの運転資金も考慮する必要があります。売上の見込み次第ではありますが、6ヶ月分程度事業を継続できる運転資金があれば、比較的安定的な事業運営が可能になります。
✔ 極端に少額、または多額である場合の注意点
上述の通りですが、資本金は金融機関等の債権者を保護する役割があり、会社の信用力をあらわします。ですので、資本金の額があまりに少額だと信用力のない会社とみなされることもあるため注意が必要です。
逆に資本金が1,000万円以上になると、設立1期目から消費税の課税事業者となる必要があります。また、1,000万円をこえると法人住民税の均等割の金額が高くなります。自治体によりますが、10万円程度は高くなるケースが多いです。増加額は自治体や従業員数によって異なるため、詳細は各自治体の情報を確認することをおすすめします。
✔ 業種別によっては最低金額の定めあり
業種によっては、許認可取得の際に最低資本金額が定められている場合があります。例えば、一般建設業は500万円、貨物利用運送業は300万円、有料職業紹介業は1事業所あたり500万円などです。この金額を下回っていると許認可を取得できないため、注意が必要です。
4. 設立後に資本金の金額を増やしたい場合
増資の手続きを行うことで資本金は増額することが可能です。しかし、増資には株主総会決議、議事録の作成、必要書類を揃えて登記手続が必要となり、登録免許税等の費用もかかります。あとで資本金の額を増やす必要が生じないよう、あらかじめ検討してから資本金を決めるのが無難です。
5. 会社設立時の資本金払込手続きについて
会社設立時点では法人口座が存在していないため、会社設立を行う発起人の個人名義の銀行口座へ資金を用意する必要があります。発起人の個人口座へ資本金相当額の振込を行います。
なお、発起人の個人口座に資本金以上の残高がある通帳を用意するだけでは不十分な点に注意してください。残高が資本金の額を超えていたとしても、資本金相当額の入金が通帳に記載される「振込」を利用し、資本金相当額を出資したことを証明する必要があります。
6. おわりに
資本金の金額の決定のほか、会社設立時には考えるべきことが多いため、詳細な計画を定めたうえで、専門家へ相談を行うことで、設立から円滑に事業を開始することが可能になります。当事務所では設立時の税務手続面でのサポートから法人税務顧問もお受けしておりますので、お問い合わせフォームからご連絡ください。