この記事の要点

  • 問題解決には「論点を定義する」「小論点に分解する」「仮説を構築する」「検証する」「解を伝える」という5つの基本の流れがあります。
  • 問題解決において最も重要なのは「論点」であり、論点なくしてその後のいかなる行動も意味を持ちません。
  • 思考には「アナリティカル思考」と「コンセプチュアル思考」の2種類があり、難易度の高い課題ほど後者から価値が生まれやすくなります。
  • 優れた示唆も、伝え方、つまりコミュニケーションが伴わなければ成果はゼロになります。
  • プロフェッショナリズムとは「付加価値を出す姿勢」であり、ポジションを取ることと、ラストマンシップが核となります。

本書の概要

経営コンサルタントの著者が、コンサルタントに求められる能力とマインドについて記述した本です。本書は、プロフェッショナルファームで求められ、かつ身につけることができる以下の2つの要素について、実践的な方法を解説しています。

要素内容
プロフェッショナリズム高い付加価値の成果を出し続けるための基本動作
問題解決能力問題を定義し、それを解決するための方法論

MECE、イシューツリー、ピラミッド構造といった問題解決の手法はさまざまな書籍で解説されています。しかし著者は、これらの手法を「実際にどう使って問題を解決するか」が十分に認識されていないという問題意識を持っています。

問題解決をテーマにした本でも全体を体系的に説明していることが特徴で、若手のビジネスパーソンや、コンサルティングに関する他の本が馴染まなかった方には特におすすめです。

問題解決の基本ステップ

問題解決には、定石ともいえる以下の基本的な流れが存在します。

  1. 論点を定義する
  2. 論点を小論点に分解する
  3. 仮説を構築する
  4. 論点と仮説を検証する
  5. 解を伝える

問題解決に取り組むにあたっては、自分が今どの段階にいるのかを常に意識すべきです。これさえできていれば、どれほど難しい問題に直面していても、次に何に取り組むべきかが見えてきます。

論点を定義する

著者は、問題解決において最も重要な概念は「論点」であると断言しています。論点を定義することは問題解決の第一歩であり、問いを間違えるとその後の行動も間違えることになります。

論点とは、行動を決めるための問いであり、必ず「べき」が含まれます。

「空を見ると雨が降りそうだったので傘を持って出かける」という有名な「空・雨・傘」フレームワークも、その前に論点を決めるべきだと著者は指摘します。空を見る目的を持っていなければ、その後にどう解釈すべきか、どのような示唆を出すべきかという方向性も定まりません。

たとえば流星群を見ることが目的であれば、空を見て雨が降りそうだとわかった時点で、観測を諦めて寝るという行動が導かれます。つまり「空・雨・傘」は、本来「論点・空・雨・傘」となるべきといえます。

論点を小論点に分解する

多くのビジネスシーンでは、論点を直接検証することは不可能な場合がほとんどです。直接検証できない論点は、より細かい論点に分解する必要があります。

論点は、大論点から小論点へ、あるいはその逆方向へと一方通行的に考えるのではなく、ボトムアップとトップダウンの両方の検証を繰り返しながら作り込む必要があります。

これは論点の分解に限った話ではなく、問題解決のあらゆるステップに共通することですが、何かを考える際には手を動かすべきです。「頭を使う時間」と「手を動かす時間」は明確に切り分ける必要があります。前者は論点の設定や分解といった思考を指し、後者は実際の検証活動、すなわち作業を指します。

そして、頭を使う時間に作業を始めてはいけません。両者が混ざってしまうと集中力が分散し、思考も作業もどちらも中途半端になってしまうためです。特に思考の最中に作業を始めてしまうとリズムが狂い、結果的に思考が深まらなくなります。今どちらに取り組んでいるのかを常に念頭に置き、その活動に集中することが重要です。

仮説を構築する

論点を構造化したら、次に小論点ごとの仮説を構築します。ここでいう仮説とは文字通り「仮の答え」であり、言い換えればその時点でのベストエフォートでの答えともいえます。

大事なのは、この仮説をその場で必ず出すという規律を放棄しないことです。プロジェクトのような大きな仕事の論点だけでなく、日常的な細かな論点においても同様です。仮とはいえ答えを決めることは脳に負荷をかける作業であり、意識的に仮説を立てることを日頃から繰り返すことで、筋のいい仮説を立てられるようになります。

付加価値の高い仕事であるほど論点は難しくなるため、仮説も外れるのが通常です。すべてが仮説通りであるならば、むしろ論点設定が間違っており、本当にクライアントが知りたいことを理解できていない可能性を懸念すべきです。仮説が外れていたら、論点を再度定義し直す必要があります。

著者は、思考には大きく2種類あると考えています。

思考の種類特徴メリットデメリット
アナリティカル思考要素分解的な発想網羅性が担保されやすい斬新な視点は見つかりにくい
コンセプチュアル思考物事を概念的に捉え、それをもとに思考を深める面白い切り口が見つかりやすい必ずしも網羅性は担保されない

どちらも一長一短であり、一方が優れているということはありません。しかし、難易度の高い課題解決においては、価値の大半はコンセプチュアル思考から生まれることが多いとされています。

論点と仮説を検証する

論点と仮説ができあがったら、次は実際の検証作業に移ります。

仮説の検証は「何を証明すべきか」と「どのように証明すべきか」に分けられ、前者により価値があるとされます。前者は知恵であり、後者は作業であるためです。とはいえ、分析を実行できなければメッセージはあくまで仮説の域を出ないため、後者にも十分に力点を置く必要があります。

一般的に、クライアントへの提言の価値の源泉は「クライアントが知らなかった事実」にあると思われがちです。しかし、クライアントにとって既知の情報であっても、解釈次第では価値を提供できる場合があります。論点の設定が的確であれば、クライアントがその視点で事実を分析・解釈したことがなく、結果的に既知の事実であっても価値が生じることがあり得るのです。

また、強引に白黒をつける習慣を身につけると、筋のいい意味合いを出す力が鍛えられます。ある論点に対して何らかの情報を手に入れたら、その情報だけで論点に対する答えを出してみるのです。当然、他にも考慮すべき要因は無数にあるため、物事を単純化しすぎていることは否めません。それでも、このような習慣を日頃から続けることで、筋のいい意味合いを出す力が強くなっていきます。「この情報はグッドニュースかバッドニュースか」「やるべきかやらないべきか」といった方向感だけでも構いません。

解を伝える

問題解決の大半は、論点の検証から得られた示唆を他者と協業するために伝えることが求められます。一人で完結する場合であっても、それを言語化しておくことが望ましいといえます。

このコミュニケーションは一般的に軽視されがちですが、コンテンツと同等に重要です。どれほど素晴らしい示唆があったとしても、それを他者に効果的に伝えられなければ相手の行動を変えることはできず、無意味になってしまいます。

コンテンツとコミュニケーションは、足し算ではなく掛け算です。 コンテンツが100点であっても、コミュニケーションが0点であれば成果は0点とみなされます。逆もまた同様で、コンテンツが0点であれば、どれほど優れたコミュニケーションをとっても、トータルでは0点です。

ピラミッド構造はロジカルシンキングの中核をなすものですが、コミュニケーションでそのまま使うには注意が必要です。ピラミッド構造は上位要素と下位要素から成る二次元的な構造である一方で、コミュニケーションで一度に伝えられる情報は直列的・一次元的だからです。これを踏まえると、コミュニケーションでは「情報を伝えるための順序」としてのストーリーを考える必要があります。

トップマネジメントはトップダウン型のコミュニケーションを好む傾向にありますが、大企業の経営者であっても、ファクトをしっかり理解してからその意味合いを考え、最後に結論を聞きたいというスタイルの方も相当数存在します。結局のところ、聞き手の状況や好みを理解したうえでストーリーを構築する必要があるのです。

コミュニケーションでは、冒頭で背景と全体像を丁寧に説明することも重要です。背景がなければ、なぜその話をされているのかが分からず、話が頭に入ってきません。また、全体像が見えないまま話を聞くことは聞き手を不安にさせ、個別要素同士の関係性が分からないまま個別要素の話を延々とされるのは苦痛を伴います。

プロフェッショナリズムとは

著者はプロフェッショナルを「高い専門性と再現性をもって、高い付加価値を出し続けることを目的とした職業人」と定義し、プロフェッショナリズムとは「付加価値を出す姿勢」であるとしています。

付加価値を出すためには、「自分はこう思う」という意見を表明すること、すなわちポジションを取る姿勢が必須です。意見を表明すると、なぜその考えに至ったのかという説明責任が伴い、論理的に説明できることが求められます。また、自分の意見に対して反論されるというリスクも伴います。このように、ポジションを取ること・リスクを負うこと・ロジカルであること・アカウンタブルであることは、すべてつながっているのです。

また、プロフェッショナルは「自分が常に集団の目的達成の最後の砦であり、自分が踏みとどまらなければ目的は達成できなくなる」と考える必要があり、著者はこれを「ラストマンシップ」と呼んでいます。ラストマンシップの精神を各員が持った集団は、非常に強い組織であるといえます。

これらのプロフェッショナリズムの実践は決して簡単ではなく、常に継続することは極めて困難でもあります。それでも、目指すべき指針として実践し続けようとする姿勢そのものが大切です。

まとめ

問題解決の全体像について体系的に整理できる一冊です。それぞれの要素は深淵で、名著が多数存在しているほどです。もちろんそれらを読むことは非常に価値のあることではありますが、本書にもある通り、全体像を押さえずに個別の要素に取り掛かると迷子になりかねません。

仮説思考やポジションを取ることなどは、意識していないとできることではなく、網羅的に考えてから作業したり、総花的であったり賛成も反対も示さない意見を繰り返す癖がついてしまうと、なかなか矯正するのが大変ともいえます。その意味で本書を早い段階で読んでおく価値は非常に高いです。興味のある方はぜひ読んでみてください。

日々の仕事の中で、自分が今「論点定義」「分解」「仮説構築」「検証」「伝達」のどの段階にいるのかを意識することから、実践を始めてみてはいかがでしょうか。

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